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 このページでは実際に学芸員課程を担当してくださる原先生、福野先生にインタビューした内容をまとめています。実際に学芸員の仕事がどのようなものであるのが、どのような事を学ぶのかを知るきっかけになればと思います。

学芸員課程について

Q:学芸員の実際の仕事とはどのようなものでしょうか 

 

原先生:

学芸員というのは皆様が博物館、博物館の中には美術館ですとか動物園とか植物園も含まれますけれども博物館の中で実際に博物館が所有している様々なコレクション、作品ですとか資料とか標本みたいなものもありますがそういうものを大切に保存していくとともにそれを使って研究や調査をしてそしてその研究の成果を一般の方々に分かりやすくご紹介する。ご紹介するに際しては博物館の場合は展示室において実際に実物の資料を使って展示を企画して、それに様々なテーマを設けてテーマに基づいてわかりやすく説明してその素晴らしさをご紹介するということが簡単にいうと学芸員の仕事かなと思います。

Q:研究ということですが、研究者の研究と学芸員の研究は質がどう違うのか教えてください

 

 

原先生:

国立博物館など専門の研究職としての機能を持っている大きな博物館では学芸員にもかなり研究するチャンスが与えられているので博物館が持っている資料について例えば所蔵の浮世絵の作者について調べるとか作品の来歴について調べるとかそれから科学博物館のような所でしたら植物標本、動物標本があるわけですけれども動物の骨格標本などについて専門的知識を活かして調べる。身近な湯浅八郎記念館では考古学の資料もあります。実際に発掘によって土の中から発見されたものを発見された状態ではどういうものかわからないのでそれをどういうものかということを捜査する。大学などの研究職の先生方と協力して行うこともありますし、「研究する」ということにおいては一緒なんですが、実物資料を間近に見ながら調査研究するというところが、一般の研究者の方が文献とかデータに基づくところと違うところかなという風に思います。

Q:学芸員の研究のやりがいを伺いたいのですが

 

 

 

原先生:

そうですね、やりがいは調査には自分の興味あることについて色々調べることができることでさらに詳しく知ることができる喜びがあります。私は湯浅八郎記念館において主に染色品、布のものを取り扱う担当になっているのですが、例えば藍で染められた作品、どなたかが昔仕事着として着ていたようないわゆる着物のようなものがどの時どのように作られて使われてきたかということを調べられる範囲で調べて、それを実際には作業着ではあるけれどもそこに素晴らしい技術が、例えば東北地方のこぎんといわれている作品があるのですが非常に素晴らしい刺繍といか刺しがほどこされていますね。そういうことの素晴らしさを展覧会を企画して一般の皆様とか見たことのないような若い方々にご紹介してこんなに素晴らしい伝統技術があったのだということを紹介することがやりがいでもありますし喜びとなっています。

 

Q:学芸員としてのやりがいや達成感が感じられるときはいつなのか教えてください

 

 

原先生:

ひとつ展示を企画してなるべく多くの皆さんに分かり易くご紹介して、できたらお客さんから直接「ああ、こんなに素晴らしい」とか「観て楽しかった」とか「色々勉強になりました」っていう風にお声をかけていただいたり、ここにもアンケートがありますが、アンケートにそういうことを書いていただくと「やってよかったな」というやりがいになりますね。達成感は自分ではなかなか測定できない。まあ、自分でやりたい展示を作って「これでどうだ!」というやりがいで自分があまり自己中心的にやってしまっても独りよがりだったりすることもあるので、その辺は自分のやったことに対してある程度周りの目線から評価を頂けたときに初めて「やったことが間違っていなかったな」とか「喜んでいただけてよかったな」ということで達成感が更に増します。また違う新しいことを企画してみようとかいうことに繋がっていくと思います。

 

Q:今後の学芸員の活動についてお聞かせください。例えば今、私たちが情報メディア論で学んでいるようなインターネットや映像技術が発達することで展示方法にも幅が出てきたことによって学芸員に求められることも変わっていくと思います。これから学芸員を目指す人もそういうことを視野に入れなくてはいけないと思うのですが、現場で思うことは何かありますか?

 

 

原先生:

私が学芸員課程で学んだ40年近く前には情報メディア論などという科目はなかったわけですよね。博物館は様々な情報を社会に向けて発信する場所ではあるのですけれども今までは本当に解説パネルとか簡単な説明文、カタロクとかいうものでしか情報を提供できなったのですけれどもこれからますますデジタルの様々な機器が発達して色々な形で、例えば見づらいような絵巻物とか浮世絵を実物は実物としての価値がありますから観ていただくとしてそれと共に細部については拡大して画像で紹介するとか、恐竜のように実際には見られなくなったものを再現フィルムのようなもので紹介するとか様々な可能性があると思います。ですからそういう分野の新しい技術を取り入れていくということも学芸員に求められていることだと思うのですが、一方でやはり博物館の一番のすばらしさは本物が、実物があるということですよね。だからバーチャルリアリティーで表現できるようになっても、本物のすばらしさを直に体験していただくために、でもコレクションを傷めないためにどういう展示方法がよいかは今後も大切に考えていかなくてはいけないことだと思います。

 

Q:現在は情報発信がインターネットなどでできる状況ですが、実際に情報発信はどのくらいの密度でされるべきか考えたことがありますか?

 

 

原先生:

私はあまりそのようなことは考えていないのですが、博物館館内での情報発信ということで、例えば手書きパネルからパソコンで作成したパネルに、さらに色々なデジタル機器を使って情報を紹介、説明するということをまず考えましたが、博物館のPRですよね。博物館のコレクション内容ですとかこんな活動をしているということを外に発信していくのに、今まででしたらポスターやチラシを作って配るくらいしかなかったのですがインターネットを活用していくということ、フェイスブックですとかツイッターなどリアルタイムで今日の、今の博物館の状況を発信していけるようになってきているので、今日の午後の公開講座にまだ空席がありますというようなことを当日の午前中に発信できるというように、必要な情報をタイミングよく発信するということが今後博物館にも求められれて行くのかなという風に思います。


 

Q:今伺った様な情報発信も学芸員の仕事となってくるわけですね。どんどん仕事が増えていきますね?それが今後問題点にもなってくる可能性もありますか?

 

 

 

原先生:

確かにそうですね。もうすでに問題になってきていることもあると思います。湯浅八郎記念館のHPは大学のHPの下にありますけれどもあまり独自の勝手なスタンスでは情報を発信できないということもありますね。またよその博物館でツイッターなどを始めるとそれにリアルタイムで反応していくことが求められて、担当スタッフの負担が大きくなっていると聞きます。博物館の中で実際にやるべき資料の保存のための仕事や研究が疎かになっては何もならないのでその辺は難しいとは思います。例えばボランティアの方の力を借りて協力してやっていくということも求められていくのかなと思っています。


 

Q:最後にこれから学芸員課程を受けようと思っている学生にメッセージをお願いします。

 

 

 

原先生:

学芸員課程は学芸員になるための資格を取得するためのコースにはなるんですが、資格の取得だけではなくて様々なことを学べるカリキュラムとなっています。博物館というのは人文科学系だけでなくて自然科学とか様々な分野が関わっているのでICUのアーツアンドサイエンスのように幅広い知識を学ぼうとしている方々にとっては博物館ということを通して色々な切り口から色々な学問を学ぶことができるのでなるべく多くの方に履修していただいて博物館の面白さを発見していただけたらよいと思います。

 

 

 

 

ありがとうございました。


 

博物館実習について

福野先生に話を伺いました。

太文字が先生の発言です。

N:博物館実習の特徴は何ですか?

 

大学に中でやっている学芸員課程なのでできるだけICUらしいものを考えていろいろと授業の内容もやっています。やはりICUには大学博物館があって実習も大学博物館でできる。一番のポイントはおそらく実物、つまり博物館の資料を実際に使うことができて、実際にそれを展示する作業ができるということが特徴です。

 

N:大学博物館を持たない学校の学芸員課程の実習とは内容が違ってくるわけですね?

 

聞こえてくるのは、例えば外の博物館で実習をすると博物館、美術館の資料に直接触れることはあまりないかもしれないとは言われていますね。まあ、最近は変わってきているのかもしれませんが。。。

(ICUの実習では)責任を持って一般に公開する展示の一部を担うわけですから責任がある。その自覚をもってやっていただくというところが一番の。。。

 

N:実習の意義ということでしょうか?

 

そうですね。

 

N:実際に実習はどのくらいの期間行われるのでしょうか?

 

実は実際には集中して8日間です。

 

N:その短い期間で何を学んでほしいのかということは具体的にありますか?

 

学芸員課程で実習というのは一番最後。総集編というか、私は卒論の様なものだなと

思っているんです。その中で展示を作り上げて最後にギャラリーツアーまでやる。皆さんがどのように思われているかわかりませんが私はギャラリーツアーが集大成、真剣さの現れてくるところだと思っていますが。。。

展示替えをするということは資料を収蔵庫から出してきてそれを展示室まで上げる、それは実習前までやってきた必須科目であるとか専門のことであるとかほとんど座学だったわけですが、それをすべて活かして実際に自分が手足を動かして学芸員として行動する一番最初の授業であり第一歩であり、学芸員課程の総集編でもあると。。。そこから最低限学芸員としてスタートできる心構えであるとかどれだけ責任があってどれだけ危険を伴うものかということを学んでいただくというものだと思います。

 

N:実習を通して今後学生にはどのようなことを学んでいってほしいと思いますか?今後の発展のようなものは。。。?

 

実習というのはケーススタディのようなものではないですか。湯浅八郎記念館で湯浅八郎記念館にある収蔵品を使って展示をする。ところが、学芸員はそれぞれ専門を持つわけです。ICUで学んだことを更に専門として例えばほかの美術館、博物館に採用されたときにここでやった実習を応用して、応用する力をつけて更に進んで成長してもらいたいと思います。ここで終わるのではなくてあくまでもその次のステップに行ってもらえるような準備、最低限のところまで、本質的なところを学んでもらえたらなと思っています。

 

N:授業はこれで集大成として終わるわけですが今後どのように自分の知識を増やしていくべきか、何かお考えはありますか?

 

たとえば、これから卒論を書いたり修論を書いたり博論を書いたりしてご自身の専門性を深めていくじゃないですか。では学芸員としてどうかというともう、本当に今でもなさっていると思いますが色々な展覧会を見に行く、色々な美術館に行く。そこから学ぶ。それからもちろん私たちも色々な情報を持っているので、実習が終わってからでも、卒業してからでも湯浅八郎記念館に戻ってきてもらえば色々な情報であるとか、色々なお手伝いはできると思います。実際に卒業してから「これはどうしたらいいのだろう」とかいろいろ迷われると思うんですよ。その時にご相談いただければ更に他の専門家、先生だとかいう方をご紹介したり、横のネットワークがあると、「このことだったらこの方に」と窓口のようになっているので、一人で全部やることはむりなのでいつでも戻ってきて相談してくださいっていう。。だから「私たちは決して放り出しません」ということかもしれません。必ずフォローしていくので。。

 

N:展示会に行って学ぶというということですが、私は展示会でひとつひとつのこと。。例えば照明だとかは見ることができるのですが、一つの大きなテーマのような全体を掴むというところまでいきません。そういう時のこつはありますか?

 

こつね。細部は見られても全体像がつかめないという。。?

 

N:パンフレットを見ても実際にはそこまでの意図がわからない。

 

でもね、読み込んでいけばよいのだと思います。ある特別展に行って主旨がどうなのか。。今まで授業で企画書を書いてみてくださいと言ってきましたが、その逆をやってみたらよいのではないでしょうか?展示を見てその企画がはっきり見えるかどうか、伝わっているのかどうかと観ていくとわかるかも。。それからレイアウト図が最近は結構あるので「どういうふうに作っていったのかな」。実際にレイアウト図にどの作品が置いてあったかということをポイントにピンポイントで書き込んでいく。。そうすると段々わかってくる。そのスペースと資料の関係とか、どうしてそれがそこにあるのかということが見えてくると

思うの。どうしてそこに置かなくてはならなかったのか、何か制約があったのかないのか、無理やりではないのかというのを紙の上だけではなくて実際にその展示室に行って自分で分析してみる。。すると色々なことが見えてくると思います。プラスその展示している状況が、そのデザインに関わってくるのだけれどその壁の色であるとか更にそのスペースの問題とか、逆に今まで企画書を書いてくださいと言ってきたけれど、ではあるひとつの展示会から企画書が見えてきますかということだと思うの。そうすると、色々と見えてくるかもしれない。

 

N:はい。

 

私も実際に展覧会に行って関連する資料のものとかに行く時にはノートを持って行って全部書いてきますから。どこに何があってここのセクションがこうでそれで読み解きますね。

 

N:なるほど

 

「展覧会を読み解く」という作業をするかもしれない

 

N:どのくらいの時間がかかるものですか?

 

展覧会にもよると思う。そこから何を読み取るのかにもよるし、まあ、混んでいるときに人がどのような動きをしているのか見ることだけでも成功しているかしていないか、動線のとりかたがどうかというのもわかるじゃないですか。色々な見方があると思うんですよ。本来は鑑賞するというのが一番なんだけれどもそうではなくて展示を作る側、学芸員目線で色々チェックするという。。。ということになってくると。。まあ展覧会によって違いますよね。

 

N:そうですね。

 

まあ。20~30分で済むことではないと思います。

 

N:今後の参考にします。ありがとうございました。

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